ひとくちに町歩きといっても、人によって面白く感じる風景は違います。ただ、町には歴史があり、それぞれの時代の特徴を示す建物があります。古いものと新しいものが混在しているのが現在の町です。頭のなかから新しいものを消していき、古い風景を思い浮かべることが町をみる面白さにつながります。 ●堤防に囲まれた町
1958年(昭和34)の伊勢湾台風によって、知多半島の景観は一変しました。水害から町を守るための一つの方法として、堤防が築かれたのです。昔の風景をイメージするときには、堤防を取り払った風景を思い描くと良いでしょう。堤防外側の水際の高さと、堤防内側の古い倉庫の高さがほぼ同じ高さに保たれており、川から直接蔵に運ぶ風景を想像することができます。 ●歩く人々を楽しませる建物
●表通りの町歩き |
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しかし、古い看板を目にすると、かつて酒造りが華やかだった頃の風景を思い出すことができます。看板だけでなく店の名前にも注目してみましょう。「桶朝」という雑貨屋、「かじ捨」というポンプ屋がありますが、少し前までは、桶屋・鍛冶屋を営んでいた店です。時代の流れのなかで、商売を変えてしまいましたが、かつてのものづくりを知ることができます。
また、店構えは、大きな看板が付けられたり、シャッターや手動の日除けシートが付けられており、新しく造り替えられたようにみえることがあります。しかしよく見てみると、リフォームはしているものの、実際は古い建物がそのまま使われていることも多く、店のなかに入ると、懐かしさを感じることのできる店もあります。 ●路地の町歩き
写真5は、亀崎の井戸風景です。路地の奥にあり、井戸の周りは広くスペースが取られています。かつて、野菜を洗ったり、洗濯をしながら、近所の人たちはおしゃべりを楽しんでいたようです。路地の奥にある生活感は、水道の普及によって変わりましたが、井戸端会議の様子を思い浮かべながら、あまり使用されなくなった井戸を眺めてみるのも面白いかも知れません。
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