知多半島の地形・地質とその生立ち1

長靴の形をして南に伸びる知多半島は,海へ漕ぎ出す最前線として,縄文時代から人が住み始めました.現在は心配ないものの,かつては水が得られにくく,溜池が数多くありました.昔の人の知恵で,溜池は水を漏らさない粘土層の上につくられています.粘土層は各所にみられますが,これを原料として窯業が発展してきたのです.水を得にくいことや粘土層が多いこと,いずれも地質と深く関係しています.自然環境や産業が,地形や地質と関係していることが,結構多いのです.地質を知った上で知多を見直すと,また新しい見方ができるかも知れません.
 それでは,知多の地質と半島の形成についてみてみましょう.

●知多半島の地形
 図1は知多の地形区分です.南端部はやや険しい山地,それより北の半島中軸部はなだらかな丘陵,そして臨海部には台地(段丘)や沖積平野が分布し,さらに海側には埋立地が造成されています.地形面の高さは,沖積平野,段丘面,丘陵面(丘陵頂部を連ねた面),山地面(山頂を連ねた面)の順に高くなっています.

●知多半島をつくる地層
 図2は,知多がどのような地層からできているかを示す地質図です.図1と比べますと,それぞれの地形は,それぞれちがう地層からできていることがわかります.つまり,沖積平野は沖積層,段丘は低い方から新田層・野間層・亀崎層など,丘陵の頂部は武豊層など,丘陵主体部は常滑層群,そして山地は師崎層群からできています.それぞれの地層を調べると,当時の情報がかなり詳しく得られます.もちろん,まだわからないことも多いのですが.
 それぞれの地層についてわかっていることをまとめたものが,図3です.図1と比べますと,より高い地形ほど,より古い地層からなり,より古い時代にできたことがわかります.
 このなかで,常滑層群が自然環境の形成に大きな役割を果たしています.知多に広がるなだらかな丘陵は,この地層がもたらしたものです.常滑層群は,厚さ2〜3m程度の粘土層と砂層とが無数に互層する(交互に重なる)地層群です(図3).粘土層は各所に露出し,これが常滑焼きの原料となりました.陶磁器についてはこのほか,野間層の再堆積性粘土を原料とする朱泥も知られています.丘陵の上部では,登り窯の跡や失敗作と思われる焼き物の破片が散見されますが,これらは常滑層群・武豊層の風化粘土を原料にしているようです.
 いっぽう,常滑層群の砂層は,水を含みますがそれほど厚くはなく,また水平方向の広がりも狭いため,保水能力がありません.これが水を得にくかった理由です.現在は愛知用水などからの供給で,問題は解消しています.
 なお,中部国際空港は,常滑層群の上に建設されていますが,全体としてよく締まって堅いので,基礎として問題はないでしょう.

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